家庭菜園の実際―栄養週期理論の作物づくり

昭和25年10月22日。日本国憲法が施行されて初めての国会に、ある１人の民間人が招致されました。その人物は、ブドウの「巨峰」を育種したことでも有名な、天才農学者の大井上康氏でした。大井上氏が招致された理由は、同氏が提唱する「栄養週期理論」による栽培技術を、食糧難解決のために、政府が導入するか否かを検討するためでした。政府が導入していた栽培技術が、土壌に化学肥料を多投する考えだったの対し、同氏が提唱する「栄養週期理論」は「植物の生理」に従って、最低必要量のみを与える考えでした。この理論の効果と実績は、多くの研究者や実践者が認めるものでしたが、GHQと政府官僚の考えに相反していたため、導入されるどころか、排斥されることになってしまいました。大井上氏は、その後も地道な研究を続け、幾つかの著書を残しましたが、残念ながらその殆どは絶版になっていました。この本は、非農家の人向けに書かれた家庭菜園の入門書です。初版が60年前に出版された後、しばらく絶版になっていた著書です。その当時、肥料は配給制で、非農家の人は十分に肥料を使うことができませんでした。そこで、今では「有機農業」と呼ばれる「堆肥」「草木灰」などを利用する方法が詳しく書かれています。この本を読めば、作物が発育する仕組み、花を咲かせ果実を成らせる仕組み、作物と肥料の関係を理解することが出来ます。そして、素人でもプロ農家並み、あるいはそれを超える作物を育てることが可能になることでしょう。